まちづくりN0.22 1997年 財団法人区画整理促進機構 刊

上記の財団法人が年4回発行していた広報誌の表紙です。
毎回特集記事で紹介される土地をモチーフとしていますが、
ただその土地をイラスト化しても面白くないので「百年後の世界」として表現してあります。
おまけにイラストに合わせたショートストーリーも書かせてもらったりと、かなり自由度の高いお仕事でした。
以下は当時裏表紙に掲載されたショートストーリーの全文です。

「百年後のニッポン No.006 風水都市を探して」
サイバーニュース社で記者をしている私は、今日もインターネットに載せる為の記事を探しに街を歩いていた。
すると路地裏で奇妙な円盤をかざす老人を見つけた。
何のまじないかと尋ねてみると老人はれっきとした科学調査だという。
彼の職業は風水師。そして彼は現在、風水学的に最も理想的な都市を探す旅をしているのだそうだ。
デジタル全盛の21世紀にあってアナログ全開のこの作業。
うむ、面白い。私はこの老人の旅に厚かましくも同行させてもらうことに決めた。
私達はまず堺の港から船に乗り西日本を海から見てまわった。風水というだけあって水は重要な要素らしい。
老人は時々円盤に目を落とすがそこにはいい結果は現われていない様だ。どうやらここではないらしい。
老人は海からの探査をあきらめ、下関に上陸後、スーパーヒカリで一路北海道を目指した。
最高時速800キロ、時間にして約2時間の短い旅だ。
函館で円盤を取り出し、しきりに方位を確認する。老人の顔がみるみる険しくなる。
やがて彼は言った。「しまった、行き過ぎた. . . 。」
そこから先の旅は混迷を極めた。
日本中の都市や街を歩き回り、離れ小島や時には宇宙まで足を延ばしたが成果はまったく得られなかった。
記事の締め切りがある為、仕方なく私は富士山のふもとで老人と別れることにした。
私は最後に思い切って老人に質問してみた。
「貴方はなぜその都市を探しているのか、そしてもし発見した時にはどうするつもりなのか。」
彼は答えた。
「私は風水師だ。理想の街を見つける事は私にとって究極の目標だ。
それを達成した時、私は一体何を想うのか、それが知りたいのだ。」
___あれから時が過ぎ、私はこうして記事を書いている。
恐らく今も、彼は日本中を旅しているだろう。有るか無いかも分からないものを探す為に。
だがそんな彼を思い出すたび、私はむしょうに彼を羨ましく感じるのであった。