まちづくりN0.21 1997年 財団法人区画整理促進機構 刊

上記の財団法人が年4回発行していた広報誌の表紙です。
毎回特集記事で紹介される土地をモチーフとしていますが、
ただその土地をイラスト化しても面白くないので「百年後の世界」として表現してあります。
おまけにイラストに合わせたショートストーリーも書かせてもらったりと、かなり自由度の高いお仕事でした。
以下は当時裏表紙に掲載されたショートストーリーの全文です。

「百年後のニッポン No.005 HEIANKYO (京都府)」
日本が誇る歴史的都市、京都。
その京都の基礎を築いたといえるのがこの平安京である。
平安京は、東西に約4500m、南北に約5300mの規模があり、碁盤の目のように区画されたきわめて計画的な都であった。
そして時代は21世紀。この由緒ある京都に新平安京なるニュータウンが出現した。
そこでは日本だけではなく世界中、果ては宇宙からたくさんの人々が集まり、町のいたるところで文化交流が繰り返されていた。
朱雀大路ではカトリック教徒とヒンズー教徒が仏教について、
四条大路では物理学者とコンピュータープログラマーが生命の進化について、
羅生門の下では地球人とエイリアンがそれぞれの歴史について議論をかわしていた。
彼等の対話は夜になっても終わることはなかった。
皆がそれぞれ好みの酒をグラスに注ぎ、昼とは違った気さくさで会話に華を咲かすのだ。
そしてこの陽気なお喋りの輪はいつしか大きな一つの流れとなり、
新平安京の通りを東へ西へ、南へ北へと夜通し闊歩するのであた。
おそらく昔の平安の人々にはその光景が百鬼夜行そのものにうつったに違いない。