上記の財団法人が年4回発行していた広報誌の表紙です。
毎回特集記事で紹介される土地をモチーフとしていますが、
ただその土地をイラスト化しても面白くないので「百年後の世界」として表現してあります。
おまけにイラストに合わせたショートストーリーも書かせてもらったりと、かなり自由度の高いお仕事でした。
以下は当時裏表紙に掲載されたショートストーリーの全文です。
「百年後のニッポン No.002 SAKAI (大阪府 堺)」
大阪府の西部、大阪湾に面した府下第二の都市である。
その歴史は平安時代の文献にも度々名が出てくる程古く、また波乱に満ちたものである。
室町時代には明国、朝鮮、琉球との貿易で富を築き、戦国時代にはヨーロッパのイエズス会とも交流を持ち
あのフランシスコ・ザビエルも布教のため来訪したという国際色豊かな貿易都市であった。
そして21世紀。かつて南蛮人が乗ったであろう帆船を見立てたアンティークな、
しかし実は科学の粋を集めたハイテク空中船が堺に着陸しようとしている。
船がどこから来たか、また積み荷が何であるのかは知る由もないが街に潤いを持たせる物である事だけは間違いないだろう。
ところで話は戦国時代に戻るが、その頃堺は卓越した経済力を用いて町人が実権を握る一種の独立国として
戦国武将からも一目置かれる都市であったのは有名な話だが、
時代を下ること明治4年から14年までの10年間、堺県として大阪から独立していた事実は割と知られていない。
どちらも最終的にはその当時の政府によって、一地方都市として管理されてしまうのだが
この街の住人はことほど左様に独立心が強いのである。
ひょっとしたら21世紀の今こうやってせっせと稼いでいるのも堺を丸ごと日本から買うための資金稼ぎなのかもしれない。